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第7回東京大学学生発明コンテスト
ポスター
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審査結果・講評
審査結果概要
第7回東京大学学生発明コンテストには、過去最多27件の応募がありました。まず、書類選考により、応募された27件を12件に絞り込み、その後、プレゼンテーション審査により、発明大賞1件、生産技術研究所長賞1件、産学連携本部長賞1件、アイデア賞1件、奨励賞4件を選定しました。
審査委員長講評
第7回学生発明コンテストも、前年同様に産学連携本部、(財)生産技術奨励会との共催により、無事に終了しました。今年の全応募件数は27件で、これまでで一番多い応募をいただきました。今年度は、事前エントリー制度を採用して、完全な応募書類を提出していただく前に、発明の名称など簡単な情報だけを事前に提出していただき、その後時間をかけて発明の構想を練ってから応募書類を提出していただく、という2段階の応募方法をとったことが、大きく影響したものと思います。さらに、広報ポスターに応募しやすいような工夫を加えたことなども、応募件数の増加に寄与したかもしれません。また、今回からの新しい試みとして、課題部門を設けたことです。今年度の課題は「学生生活を快適にする発明」であり、10件の課題部門への応募がありました。
例年どおり工学系の学生からの応募が多く、半数強の15件をしめました。続いて、新領域創成科学研究科から4件、総合文化研究科から3件、情報学環・学際情報学府から3件、医学系1件、理学系1件と続きました。また、学部からの応募は、わずかに3件にとどまり、大学院生中心という傾向は例年とおりでした。
第1次書類審査によって12件に絞り込み、それらについては弁理士さんに先行事例の調査をお願いしました。最終審査においては、自分の発明をわかりやすく紹介するとともに、どのように先行事例と違うのかというディフェンスも含めたプレゼンをお願いしました。試作品を使った具体的なプレゼンも数多く、学生諸君の意欲が感じられました。その結果、発明大賞1件、生研所長賞1件、産学連携本部長賞1件、アイデア賞1件、そして奨励賞4件の受賞が決まりました。なお、今年度も(株)ニコン様より豪華な副賞をご提供いただきました。ここに厚くお礼申し上げます。
発明大賞を受賞された応募は、医療現場のニーズから生まれた発明で、これこそちょっとした工夫で大きな効果を得る発明といえるでしょう。生研所長賞の「電動自転車のシェアリングによる、キャンパス内・周辺交通システム」(課題部門)は、環境にやさしい電気自転車のシェアシステムのニーズとシーズの対応、システムとして成立する採算性の検討など、きわめて具体的に提案されたことが受賞につながりました。産学連携本部長賞の「ガラス管を用いたフェムトリットル級液滴作成」(一般部門)は、きわめて微細な液滴を作る方法を発明したものです。実験中の、いわゆる予期しなかった失敗を成功に結び付けたところに大きな価値を認めたいと思いますし、幅広い分野での応用も考えられるかもしれません。
アイデア賞の「異種マイクロビーズを隣接させた状態で観察可能なDIK Channel(出会い系流路)」は、異なるマイクロビーズを隣同士にくっつけた状態にセットすることができる装置で、従来方法と比べると、確実性、効率性に富み、細胞間の相互作用や細胞融合のためのデバイス開発などに貢献できると考えられます。さらに、奨励賞の「電気分解で発生する泡による選択的取り出しが可能な細胞アレイ」(一般部門)、「ユニバーサル・パワーアシストグローブ」(一般部門)、「クリエイティビティ・チェッカー」(課題部門)、「洗練された情報の中から洗練された情報を取り出す検索システムとそこから生まれる大学ネットワーク」(課題部門)は、いずれも甲乙つけがたい秀作で、例年より多いですが4件を奨励賞とさせていただきました。
前回の応募では、日用雑貨の発明件数が少なく寂しかったのですが、今年は11件にまで伸びました。課題部門を設けたことや、広報ポスターやチラシに、アイデア段階でも応募できることを明記して、なるべく応募しやすいように努めたことの現れだと思います。次年度も、一層の工夫を凝らして多数のバラエティに富んだ応募を得たいと思います。
表彰式
第7回東京大学学生発明コンテストの授賞式が2010年1月27日(金)に行われました。野城智也東京大学生産技術研究所長及び影山和郎東京大学産学連携本部長、また来賓として大木裕史(株)ニコン執行役員 コアテクノロジーセンター研究開発本部長が出席されました。
日時 | 2010年1月27日(水) 16:30-17:20 |
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場所 | 東京大学 駒場ファカルティハウス |
式次第 |
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受賞者には金一封、表彰状、楯が贈呈されました。また、上位3賞には(株)ニコンよりカメラが贈呈されました。
受賞者の声
四津 有人 (医学系研究科 外科学専攻 博士2年)
後日公開[一般部門]
この度はこのような素晴らしい賞を賜り、大変嬉しく思います。光栄です。ありがとうございます。
今回のアイデアは、医療現場で働きながら思いついたものです。医療は日進月歩で高度化していく一方で、それを動かす人手は不足しており、多忙で複雑化しています。ちょっとした工夫でもっと効率的に、もっと摩擦なく、もっと自然に、もっと安全にできる筈です。しかし日々の忙しさで、発想や工夫を思いついても、なかなかそれを具現化する機会がありません。そういった意味で、このコンテストの存在意義は大変大きいと思います。
製品開発に関する教育は、医学部の授業にはありません。東京大学発明コンテストでの受賞を機に、患者様に優しい、医療従事者にも優しい、命を守る製品開発をめざして勉強させて頂きます。
我々の専門である発育発達リハビリテーション医学は、必然的に認知科学・神経工学・人間工学・バイオメカニズム・生活工学と不可分の領域であり、これからも交流の窓口を開いていきます。多くの皆様と一緒に、多くの開発ができたらと思います。
最後に、沢山の事を教えてくださった患者様一人一人、これまでお世話になった先生方、コンテストの場を提供して頂いた東京大学生産技術研究所産学連携委員会・東京大学産学連携本部・財団法人生産技術研究奨励会の皆様に心から御礼申し上げます。ありがとうございました。
細谷 勇斗 (情報学環教育部 1年)
「電動自転車のシェアリングによる、キャンパス内・周辺交通システム」[課題部門]
今回、生産技術研究所長賞というたいへん名誉ある賞を頂きました。
まずは、前例や特許面等について多大なる助言を頂きました先生方や事務局の皆様方に厚く御礼申し上げます。
さて今回発表させて頂いた「電動自転車のシェアリングによるキャンパス内・周辺交通システム」は、電動アシスト自転車の共有システムを広告収益によって運営し、それによって、大学等、一定の領域内の自転車の総量をコントロールしようという発明の提案です。
提案にあたっては、実現性と収益性、発展性の両立を重視しました。 具体的には
・現在、民生レベルで普及している技術の組み合わせによって実現可能であることを示して技術的なハードルを下げ、
・類似の広告モデルや海外の自転車シェアリングの実態を詳しく調査することで確かな収益可能性を見いだし
研究段階のPMVを実社会で運用するテストヘッドとなる可能性を含むことでチャレンジングな将来性をアピールしました。
また、利用者や運営側、運営の舞台となる顧客や広告主など、多くの関係者の複雑な目的関係をうまく組み合わせることにより、環境に配慮しながら誰も不利益を被らずに問題を解決する合理性も、本提案の特長のひとつです。
わたしはあくまで計画として、本発明を考案し提案させて頂きました。技術的には何一つ新奇な構造はもっておりません。
故に、私はこれを特許として出願し、独占的に保護する類の意図はなく、ビジネスモデルにおける一種のGeneral Public Licenseにも類似したスタンスをとることで、本提案を自転車シェアリング導入のヒントとして頂ける善意ある皆様と広く意見を交換し、共に明るい豊かな社会を形成したいと考えています。
皆様からのご質問、ご連絡を心よりお待ちしております。
竹内 惇 (工学系研究科 物理工学専攻 修士2年)
「ガラス管を用いたフェムトリットル級液滴作成」[一般部門]
この度はこのような素晴らしい賞をいただき、大変光栄に思っております。
今回の発明は修士課程の研究中に発見された現象を利用した発明だったのですが、それを発表する機会及び評価される機会を与えて頂きありがとうございました。普通の研究の発表とはまた違った、いい経験となりました。この技術が将来なんらかの形で利用され、社会の役に立つことになりましたら嬉しい限りです。
最後に研究の指導及び発明の機会を提供して頂いた、研究室の先生をはじめ構成員の方々に厚く御礼申し上げます。
手島 哲彦 (総合文化研究科 広域科学専攻 修士1年)
「異種マイクロビーズを隣接させた状態で観察可能なDIK Channel(出会い系流路)」[一般部門]
この度は、アイデア賞に選出していただき、大変光栄に思っております。発明コンテストの審査委員の先生方、関係者の皆様に厚く御礼申し上げます。
私は昨年まで農学部に在籍し、主に免疫細胞の抗原提示について学んでいました。そこで得た知識と技術を活かして農学と工学を融合する新しい分野の研究に従事しようと決意し、今年から院生として生産技術研究所のある駒場キャンパスにまた戻ってきました。そのため、真理探究に重きを置き、時に独り歩きしてしまう“サイエンス”と、利益と直結しているが社会のニーズに否が応でも拘束される“テクノロジー”の両方の世界に身を置き、その境界で自分自身の研究スタイルに悩み、模索する日々が続いておりました。
本コンテストの応募と発表を通じて、過去の特許事例に触れ、開発の歴史の中で私の研究内容をどこに位置付け、どこに新規性があるか、将来工業製品としてどう社会に役立てられるかを考えさせられました。これは基礎研究に携わる人間にとっても、研究内容やその“意義”をより魅力的に紹介し、社会の賛同を得る上で必要不可欠な能力ですが、学術論文や学会発表などの普段の研究生活からは決して得られないものではありません。改めて自身の指針を根本から見つめ直すことができ、上述した二つの世界が、短い期間では異なったベクトルを持っていても、長いスパンで鳥瞰してみると、いつか一つに収斂していく(していかなければならない)ものだと感じることができました。
本コンテストで得られた貴重な経験を活かし、今後も一層研究活動に注力、精進したいと存じます。最後に、本発明に至るまで緻密なサポートと助言をして頂いた研究室の先輩方、そして実験に不慣れでミスばかりしている私を温かく研究室に受け入れて下さり、いつも丁寧に指導して下さっている指導教員の竹内昌治先生にこの場を借りて御礼申し上げます。
倉員 智瑛 (総合文化研究科 広域科学専攻 修士1年)
「電気分解で発生する泡による選択的取り出しが可能な細胞アレイ」[一般部門]
このたびは「第7回東京大学学生発明コンテスト 奨励賞」を賜り、誠に光栄に存じます。
本発明は細胞の取り扱いに関して自動化、高速化を目指すものです。私は当初この発明の意義を見いだせないまま研究を進めていました。指導教員の竹内先生とミーティングを重ね、生産技術における本発明が果たす役割を認識していくうちに、次第に熱意が湧き、今回の発明に至りました。その際に重要になってくる発明に対する権利主張を、本コンテストのおかげで明確に意識することができました。このたびの受賞を励みとし、今後とも自らの研究において微力を尽くす所存です。審査に携わっていただいた関係各位に厚く御礼を申し上げます。
山浦 博志 (工学系研究科 精密機械工学専攻 修士2年)
「ユニバーサルパワーアシストグローブ」[一般部門]
このたび奨励賞を賜りましたこと、大変光栄に思います。
本発明は指関節を駆動する外骨格機構に関するものです。実物に勝るプレゼンテーションは無いと考え、実際にこの機構を製作して審査に臨みました。それを実現可能性の高さとして評価して頂いた事が、受賞に結びついたものと考えております。
コンテストを通じ、「特許を得るために何が必要か」という視点で自らの発明を何度も練り直すことで、実践的に知的財産権への理解を深めることが出来ました。また審査により自身の主張に対するフィードバックを得られたことも貴重な経験であったと考えております。
最後になりますが、このような機会を設けて下さった関係者の皆様に厚く御礼申し上げます。
高橋 祐樹 (工学系研究科 建築学専攻 博士1年)
「クリエイティビティーチェッカー」[課題部門]
作村 守央(新領域創成科学研究科 先端エネルギー工学専攻 修士1年)
「洗練された情報の中から洗練された情報を取り出す検索システムとそこから生まれる大学ネットワーク」[課題部門]