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第10回東京大学学生発明コンテスト
ポスター
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審査結果・講評
審査結果概要
第10回東京大学学生発明コンテストには、11件の応募がありました。まず、書類選考により、応募された11件を9件に絞り込み、その後、プレゼンテーション審査により、発明大賞1件、生産技術研究所長賞1件、産学連携本部長賞1件、アイデア賞1件、奨励賞3件を選定しました。
審査委員長講評
第10回学生発明コンテストも、前年同様に産学連携本部、(財)生産技術研究奨励会との共催により、無事に終了しました。今年のエントリー件数は27件と例年並みでしたが、応募はその半数程度と若干低調でした。国立大学の法人化後、研究活動にかかる発明は職務関連発明として大学に届け出ることになりました。このため学生の発案に基づく発明、あるいは学生の寄与の多い発明であっても、出願等の手続きの関係で本コンテストに応募しにくい状況が生まれていることが遠因として考えられます。今後はこれらの制度との整合を図りうる知財教育の場が必要であろうと感じています。
今回の募集・審査も例年通り自由部門と課題部門に対して行われました。平成24年度の駒場リサーチキャンパス・オープニングセレモニーのテーマとリンクして募集された課題部門のテーマは「『安心と安全』に役立つ発明」であり、ほぼ半数がこの部門への応募でした。審査は両部門のバランスを考慮して行われました。
第1次書類審査によって9件に絞り込み、それらについては弁理士事務所に先行事例の調査をお願いしました。最終審査においては、自分の発明をわかりやすく紹介するとともに、どのように先行事例と違うのかというディフェンスも含めた発表をお願いしました。試作品を使った具体的なプレゼンテ―ションもあり、学生諸君の意欲が感じられました。その結果、発明大賞1件、産学連携本部長賞1件、生研所長賞1件、アイデア賞1件、さらに奨励賞3件の受賞が決まりました。なお、今年度も(株)ニコン様より豪華な副賞をご提供いただきました。ここに厚くお礼申し上げます。 発明大賞を受賞した「金属-半導体複合ナノ粒子を用いた塗布型マルチカラーフォトクロミック材料の開発」は、新しい複合ナノ材料の作製法に関するものであり、応募者自身の大学院での研究に付随する成果でしたが、発想・発案に対する応募者の貢献の大きさが認められての受賞となりました。今後、様々な実用面での応用が期待できる基本技術であり、是非これを活用した実施例に注目してゆきたいと思います。産学連携本部長賞を獲得した「少量サンプルのアレイ化に向けた遠心力ダイナミックマイクロアレイデバイスの作製」は、マイクロ流路デバイスを扱う先端領域において、流体の駆動を遠心力を使って行うという身近でユニークな発想によるものでした。この発明は教養課程の学生を対象にした研究体験プログラムであるUROPの成果であり、短期間の実験・実習の結果をコンテスト応募までにまとめあげた努力に敬意を表します。生産技術研究所長賞の「コンセントに接続されている機器を認識する装置」は、コンセントが自分につながっている機器を知っているとどういうメリットがあるか、を実践する発明であり、例えば将来的にはコンセント自身が省エネを考えるといった可能性にもつながるものです。実際に作製した試作品を用いてのプレゼンテーションも高く評価されました。アイデア賞の「ジオセル補強土構造物」は簡易に土木構造物を補強する現在注目の技術であり、また奨励賞の「蒸気封入型電場ピックアップ法」、「液状水の浸透および流下性状を用いたコンクリート表層品質の簡易非破壊検査法」、「木杭浮島」はそれぞれ実験の結果を伴う発表でいずれも甲乙つけがたく、奨励賞とさせていただきました。
冒頭にも述べましたが、本コンテストによる学生の発明の募集と国立大学法人としての知財の管理は、必ずしも制度として完全に整合していない面があります。一方で、知財に興味を持つごく一部の応募者を除いては、発明や特許といった知財に対する基礎知識が不足していることも審査の過程で実感致します。そこで今回、生産技術研究所と産学連携委員会では主催する知財教育の在り方を再検討し、来年度については知的財産講座「今日からあなたも特許が書ける(仮題)」を開催することと致しました。これに伴い来年度については発明コンテストはお休みになります。まず学生の皆さんには知財の制度と発明の価値を十分に理解していただき、その後皆さんの優れた発明を改めて募集することができれば、と考えています。詳細は後日お知らせいたしますが、多数の学生の皆さんのご参加を期待しております。
表彰式
日時 | 2013年1月21日(月) 16:30-17:20 |
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場所 | 総合研究実験棟 中セミナー室 (東京大学駒場Ⅱリサーチキャンパス内) |
式次第 |
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受賞者には金一封、表彰状、楯が贈呈されました。また、上位3賞には(株)ニコンよりカメラが贈呈されました。
受賞者の声
楯と表彰状については、クリックすると大きな画像が表示されます。
川脇 徳久 (工学系研究科 応用化学専攻 博士課程)
「金属-半導体複合ナノ粒子を用いた塗布型マルチカラーフォトクロミック材料の開発」[一般部門]
この度は、東京大学学生発明コンテスト、発明大賞を受賞させていただくことになり、大変光栄に思います。まず、本発明を高く評価して頂いた発明コンテスト関係者の皆様、アドバイスをくださった立間徹教授ならびに研究室の皆様に深く感謝御礼申し上げます。
さて、本発明は、「光」と「色」に着目した新規材料に関するものです。金や銀などのナノ粒子(1ナノメートルは10億分の1メートル)は、その大きさや形に依存して、青や赤、緑など、様々な「色」を示すことが知られており、古くからステンドグラスや切り子といったガラス製品の染色に用いられてきました。立間研究室では、このような「色」を示す金属ナノ粒子に、酸化チタンと呼ばれる半導体を組み合わせることで、「光」を当てると、当てた光の「色」に着色でき、さらに、その色を消すこともできる、フォトクロミック現象を見出しました。しかし、従来の方法では、酸化チタン膜の作製に、高温焼成を必要とするため、無機物やプラスチック製品などに、その応用が限られていました。そこで、私は、金属-半導体の複合ナノ粒子を作ることで、大量生産が可能で、多様な担体に対して大面積に利用ができる、より実用性の高い材料として発展させました。例えば、この金属-半導体複合ナノ粒子を、壁材に混ぜ込んで塗布することで、レーザーポインタで文字を書いたり消したりできる、簡便で大面積なホワイトボードとして使用することや、紙に混ぜ込むことでリライダルなメモ用紙、新しいタイプの光転写型プリンタとしての利用が期待できます。
私は、今回の発明コンテストを通じて、社会に役立つと思ったアイデアを、どのように競合から守り、利益に繋げるかということを意識しました。自分のアイデアに関する、先行特許や権利を主張できる範囲を調べ、利益を見込める市場や競合製品を分析することは、大学の授業や、研究室の実験にはない、とても新鮮な作業でした。我が国は、国土も狭く、資源もなく、人口も少なくなるばかりです。その中で、アイデアの創出や、その権利を守るトレーニングを行い、ひとりひとりの利益を生み出す能力を高めることは、ますます重要になります。今後もより多くの方に、この素晴らしいコンテストに参加して、自分のアイデアを活かしていってもらいたいと思います。
最後になりますが、本日頂戴しました賞を励みとして、今後も研究活動に、そして技術の具現化に、より一層精進してまいります。
池上 洋行 (情報理工学系研究科 創造情報学専攻 修士課程)
「コンセントに接続されている機器を認識する装置」[課題部門]
この度は、第10回東京大学学生発明コンテスト 生産技術研究所長賞という栄誉ある賞を受賞することができ、大変光栄です。私の発明に対して貴重なお時間を割いて評価し、ご意見をくださりました発明コンテストのスタッフの方々に深く御礼申し上げます。
この発明は、自分の研究にかかわる一部分を研究の本質から外れて開発したものになります。大学院生の本分は研究であると理解していますが、本コンテストを動機として研究の本筋から離れたものに真剣に取り組めました。研究では簡単な実験程度に終わったものを作りこみ、新しいハードウェアとソフトウェアとして開発しました。そうすることによって今回の課題である、「安心と安全に役立つ発明」への応用が見える物となりました。このように東大学生発明コンテストは、私にとって非常に有意義な機会でした。またその発明を高く評価して頂けたことは自分自身の自信にも繋がりました。
今回の受賞をバネにして、今後も積極的に自分のアイディアを研究や発明(特許)といった形で実現して行きたいと思います。このような機会を与えて頂き本当にありがとうございました。後輩にも伝えたいと思いますので来年度以降も本コンテストを継続して頂ければと思います。
長谷川 寛将 (教養学部 理科2類)
「少量サンプルのアレイ化に向けた遠心力ダイナミックマイクロアレイデバイスの作製」[一般部門]
この度は、第10回東京大学学生発明コンテストにおいて、産学連携本部長という身に余る賞をいただき、大変光栄に思っております。
私が学部2年生でありながら研究をすることができたのは、全学自由研究ゼミナールとして提供されておりました「学部学生のための研究入門コース-UROP(Undergraduate Research Opportunity Program)-」を受講し、東京大学生産技術研究所竹内研究室に受け入れていただいたことがきっかけでした。お忙しいなか親身にご指導くださった竹内昌治准教授、尾上弘晃助教、手島哲彦さんをはじめとする竹内研究室の皆様、そしてUROPという素晴らしいプログラムを提供してくださった方々にこの場を借りてお礼を申し上げます。
将来の進路について迷いや不安のある中で、今回の受賞は研究者を目指す大きな自信につながりました。今後も様々なことに積極的に挑戦を続け、社会に貢献できるよう精一杯の努力をしていきたいと考えております。
最後になりますが、このようなコンテストの場で発表する機会を与えてくださいました東京大学生産技術研究所産学連携委員会、産学連携本部、生産技術研究奨励会の皆様に心より感謝申し上げます。
Xinye HAN (工学系研究科 社会基盤学専攻 博士課程)
「ジオセル補強土構造物」[課題部門]
I am much honored to receive “The Idea Prize” in the invention contest of the University of Tokyo. As we know, the 2011 off the Pacific coast of Tohoku Earthquake caused massive tsunami, and a large number of infrastructures, for example houses, embankments, coastal levees, were destroyed. As a student or an engineer in civil engineering department, it is our responsibilities and destination to develop new technology to provide high-quality, cost-effective and environment-friendly infrastructures against the disasters.
I joined KIYOTA LAB(Geo-Disaster Mitigation Engineering) in 2011 and focused on the technology of geosynthetic-reinforced soil structures which are usually cost-effective and meet the ultimate objective of civil engineering such as more useful to society and environment with greater functionality at lower cost compared with concrete structures. In the invention contest, a new type of geosynthetic (square-shaped-geocell) has been proposed and evaluated, which can provide higher resistance to the earth structures against the earthquake compared with traditional geosynthetics such as geogrids. In this project, my supervisor- Associate Professor Takashi Kiyota gave me a lot of guidance and Professor Fumio TATSUOKA also provided me many valuable suggestions. Thank you very much. I’ll be trying my best to contribute to further development of this technology.
永沼 翼 (新領域創成科学研究科 自然環境学専攻 修士課程)
「木杭浮島」[一般部門]
この度は第10回東京大学学生発明コンテストにおいて奨励賞を賜り、光栄の至りと存じます。
私の発明である木杭浮島は河川環境を改善するツールであり、最大の特徴は簡単に手に入る材料で、誰でも作成可能であるという点です。近年、環境への関心が高まっていますが、河川においてはボランティアレベルで行える活動が河川周辺の環境整備に留まっている現状を目の当たりし、本発明が生まれました。
発明とは人々の願いをかなえるものであり、原理の難しさ、複雑さは関係がないと思います。東京大学学生発明コンテストにおいては、理解が難しそうな内容のものが多く賞をとっており、身構えてしまいがちですが、実際に木杭浮島のような単純な仕組みで作られたものでもこのような賞をいただくことができました。これは意義のある発明であるという点が評価されたのだと考えております。皆様も難しく考えず、世の中のニーズにあった発明をし、発明コンテストに挑戦してみてはいかがでしょうか。
最後になりますが、東京大学学生発明コンテストの益々のご発展を心よりお祈り申し上げます。
菊地 健人 (工学部社会基盤学科)
「液状水の浸透および流下性状を用いたコンクリート表層品質の簡易非破壊検査法」[一般部門]
下河 有司 (工学系研究科 物理工学専攻 博士課程)
「蒸気封入型電場ピックアップ法」[課題部門]
この度は、第10回東京大学学生発明コンテストにおいて奨励賞という素晴らしい賞を賜りまして大変光栄に思います。審査委員の先生方や関係者の皆様に厚くお礼申し上げます。
今回のコンテストで応募させて頂いた発明は、「液体を取扱う実験者が安心できる」装置を目的として考案しました。市販のサンプル瓶をそのまま実験セルとして用いることで、有害な蒸気を閉じ込めるとともに、使い捨て可能という簡便な仕組みになっています。今回の発明は、電場で液体の表面に力を加えるという基本部分が従来技術として存在していたため、「どこに新規性があり従来技術と異なるのか」という点を意識しながら発明を行いました。
発明を社会で役立たせるために必要な特許の考え方に触れる貴重な機会を与えてくださった発明コンテスト関係者の皆様に改めてお礼申し上げます。