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第5回東京大学学生発明コンテスト

ポスター

第5回東京大学学生発明コンテストポスター

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審査結果・講評

審査結果概要

第5回 東京大学学生発明コンテストには13件の応募がありました。まず、書類選考により、応募された13件を9件に絞り込み、その後、プレゼンテーション審査により、発明大賞1件、生産技術研究所長賞1件、産学連携本部長賞1件、アイデア賞1件、奨励賞1件を選定しました。

審査委員長講評

発明コンテストも5回目となりますが、今回からは産学連携本部も主催者に加わっていただき、より全学的な行事に成長してまいりました。今年の応募件数は、例年よりやや少ない13件でした。例年、工学系の学生からの応募が大変多いのですが、今回は特にその割合が多く、8割以上が工学系からの応募でした。また、博士、修士、学部別の応募件数は、博士と修士がほぼ同数で、学部からの応募はわずかに1件にとどまりました。

今年も例年通り、第1次の書類審査、先行事例のチェック、そして第2次のプレゼンによる本審査という過程を踏んで、5件の受賞が決まりました。産学連携本部が主催に加わったことで、トップ3の名称が、発明大賞、生研所長賞、産学連携本部長賞に変更になりました。また、副賞の賞金も昨年までに比べて倍額になっていますし、(株)ニコン様より一眼レフの副賞もご提供いただきました。ここに厚くお礼申し上げます。

発明大賞を受賞された「高純度オルソ水素分離精製装置」は、オルソ水素とパラ水素の脱利温度が大きく異なることを利用して、これら2つの水素を簡便に精製する装置です。新規性が認められるとともに、廉価で小さな装置ですむなど、関連の研究を加速させることが期待され、発明大賞としてふさわしいものでした。生研所長賞の「調和振動子のシミュレータによるサウンドスペクトルの描写」は、人間の感覚にあうように、周波数を柔軟にビジュアライズできる装置で、楽しい生活に一役買う発明でした。また、産学連携本部長賞の「くの字型スチールブレースによる伝統木造建築の耐震補強」は、低コストで、伝統的な建築物の美観を生かしながら補強ができることに、社会的な価値が認められました。さらに、アイデア賞の「適応型無遅延フィルタ」も大量データ、複雑な計算を繰り返し行う処理を高速化するもので、多方面で応用が考えられます。奨励賞の「臭わずに香る靴 -香印象 臭職活動-」は、発明の名称にも工夫が見られ、日常生活からの面白い発明だったと思います。

今回は、文系からの応募がなく応募件数もやや少なかったわけですが、学生諸君が持っている発明につながる新鮮な発想というポテンシャルは、まだまだ十分に期待できると考えています。次年度は、ちょっとした発想であっても、とにかく応募してみたくなるように、発明コンテストの敷居を低くするような広報に勤めたいと考えています。

表彰式

第5回 東京大学学生発明コンテストの授賞式が2008年1月24日(木)に行われました。前田正史東京大学生産技術研究所長及び藤田隆史東京大学産学連携本部長、また来賓として市原裕(株)ニコン常務執行役員が出席されました。

日時 2008年1月24日(木) 16:30-17:20
場所 東京大学 駒場ファカルティハウス
式次第
  • 所長挨拶・・・前田 正史 (東京大学生産技術研究所長)
  • 本部長挨拶・・・藤田 隆史 (東京大学産学連携本部長)
  • 来賓挨拶・・・市原 裕 (株式会社ニコン常務執行役員)
  • 表彰
  • 審査委員長講評・・・桑原 雅夫 (東京大学教授)
  • 受賞者代表挨拶・・・二木 かおり (発明大賞受賞者)
  • 記念撮影・記者会見

受賞者には金一封、表彰状、楯が贈呈されました。また、上位3賞には(株)ニコンよりカメラが贈呈されました。

受賞者の声

発明大賞
二木 かおり (工学系研究科 物理工学専攻 博士3年)
「高純度オルソ水素分離精製装置」

このような栄えある賞を頂き大変嬉しく思っております。誠にありがとうございます。発明コンテストを開催してくださった方々、審査委員の先生方に厚く御礼申し上げます。  「高純度オルソ水素分離精製装置」は、核スピン状態の違うオルソ水素とパラ水素を分離する装置です。高純度オルソ水素分離精製装置の開発は、私の修士・博士課程の研究テーマで、5年間ひたすら開発に取り組んできました。開発を続ける中で従来の装置よりも、安全で簡単に精度ある分離を可能とする装置・手法を開発しました。

オルソ・パラ分離装置は1950年代に開発されました。はじめは論文に述べられているとおりに装置を作製し、同手法で分離するつもりでした。部品は既製品でないため、河内先生に手伝っていただきながら、設計図を引き試作工場で工作しました。2年間かけて装置を作製し、論文と同手法で分離を行ってもまったく分離されませんでした。その後は新しい技術や装置を取り入れ、改善していく試行錯誤の毎日でした。

ある日大きく引き伸ばしたデーターを見ていたときに、今回開発した分離手法を思いつきました。その手法を試してみると、従来よりも安全に簡単に精度ある分離を行うことが可能になりました。あのときは緊張と興奮で本当に眠れなかったのを覚えています。

発明大賞の応募を通じて、開発目的・従来との差異・将来性と課題など、多くのことを改めて考えることができ、非常に貴重な体験となりました。また、大賞をいただけたことで今後の研究への意欲がさらに大きくなりました

この技術が将来多くの人の役に立ち、利益も生んでくれたら、非常にうれしい限りです。やり続けること、考え続けること、試行錯誤してみることの中で、生まれた技術だと思います。また研究室の先生方、学生さんが協力してくださったおかげで生まれた装置だと思っています。本当にありがとうございました。

生産技術研究所長賞
江原 晴彦 (理学系研究科 生物化学専攻 修士1年)
「調和振動子のシミュレータによるサウンドスペクトルの描写」

このような素晴らしい賞をいただき、大変光栄に思っております。審査をしてくださった先生方を始め、関係者の皆様には改めて感謝の言葉を申し上げたいと思います。正直なところ、私の発明は特許性や経済性という点においてはまだまだ不足している点があると思いますし、審査会場でもそのことを思い知らされましたが、権利主張のためのプレゼンという貴重な機会を与えていただきありがとうございました。

私は理学系研究科に属し、その研究が役に立つかどうか、金になるかどうか、といった発想はまったく持たず、真理の探究に向けた実験を日々行っているつもりです。権利主張よりも実際の研究活動のほうが重要だというのは言うまでもありません。しかし、この複雑化した世の中において、説明抜きで研究の意義を理解してもらうのは困難であり、社会に対する説明責任が必要とされます。また、社会に対する説明を怠ることは、いわゆる「インチキ科学者」の横行を許してしまうことにもなりかねません。それ故に、例え純粋な基礎研究に携わるものであっても、他社への説明(これは広義の意味での権利主張とみなすことが出来ると思うのですが、)から逃れることは出来ないと考えています。

自分のプレゼンを作る中で、何をもって自明とみなすか、どの程度一般化した特許が許されるのか、など、特許に関してはまだまだ議論するべきことがあると感じました。やはり、現在のシステムの中で利益を最大化しようとするだけではなく、どのようなシステムにすれば人類の発展が最も促進されるのか、といった政策決定的な視点を持つことが大切だと思います。より多くの人に問題意識を持ってもらうためにも、このコンテストがさらに発展していくことを望みます。この感想文を読んでしまったそこのあなたも、難しいことは考えず、とりあえず応募してみたらいかがでしょうか。多少稚拙に見えたとしても気にする必要はありません。世の中、中身が無いのに権利主張ばかりうるさい人間もたくさんいるのですし、そのような人間相手にバカを見ないためにも、権利主張の練習をしてみませんか?

産学連携本部長賞
天野 裕 (新領域創成科学研究科 社会文化環境学専攻 修士1年)
「くの字型スチールブレースによる伝統木造建築の耐震補強」

今回は産学連携本部長賞に選出して頂き、誠に光栄に思っています。

私はこれまで建築を学ぶ中で、高い耐震性能を求める現代建築の考え方を知り、また耐震性についての社会的な関心の強さも知りました。その一方で、耐震性に劣っていてもそのままな、古い建物にも素朴に魅力を感じていました。そのため、私はそんな古い建物を見る度複雑な思いを抱くようになってしまいました。一概に古い建物は耐震性に劣ると言えませんが、今回の発明は、自分の中で何となくわだかまっていた思いから生まれたものです。「くの字型スチールブレース」は、回答としてまだまだだと思いますが、こうして自らのアイデアを具体化し、発表する機会を与えて頂き感謝しております。

最後に、今回の発明に繋がるきっかけとヒントを提供して頂いた、景観研究室の内藤廣先生・川添善行さん、鋼構造研究室の伊藤拓海さんに御礼を申し上げたいと思います。

アイデア賞
鴨頭 輝 (医学部 5年)
「適応型無遅延フィルタ」

発明コンテストに参加させていただき、その上アイデア賞に選出していただきありがとうございました。書類審査や本審査でのディスカッションを通じ、先行特許の調査から発明を実際の特許に結びつけるまでのアプローチの仕方を学ぶことができ、大変有意義な経験を得られたことを感謝いたします。コンテストの運営にたずさわり、お世話下さった方々に深く御礼申し上げます。

奨励賞
大井 泰史 (工学系研究科 マテリアル工学専攻 修士2年)
「臭わずに香る靴 ―香印象 臭職活動―」

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