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第1回東京大学学生発明コンテスト

ポスター

第1回東京大学学生発明コンテストポスター

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審査結果・講評

審査結果概要

第1回 東京大学学生発明コンテストには20件の応募がありました。まず、書類選考により、応募された20件を10件に絞り込み、その後、プレゼンテーション審査により、最優秀賞1件、優秀賞2件、アイデア賞3件、奨励賞4件を選定しました。

審査委員長講評

今年度、初めて東京大学学生発明コンテストを開催することとなりましたが、企画を行う際に、どのくらいの応募があるだろうか、もしかするとほとんど応募がないのではないかという不安がありました。ところが、実際には20件の応募があり、東京大学の学生の知的財産に関する意識の高さとアイデアの豊富さをあらためて感じることができました。

応募されたアイデアは、日常生活から生まれたもの、日頃の地道な研究から生まれたもの、学生らしいスケールの大きなアイデアなど多岐にわたり、かつ質も大変高く、選考が難航することもありました。守秘義務契約のある第三者調査機関に書類選考を通過したアイデアを見て頂く機会がありましたが、いずれのアイデアも十分特許性があるというコメントも頂いています。先行技術をもとにした書類審査を通過しなかったアイデアについても、逆に言えば十分特許性があり、タイミングが悪かったということも言えるかと思います。

書類選考を通過したものについてはプレゼンテーションを行ってもらいましたが、こちらが調査した先行特許をうまく回避するようにアイデアを練り直しての発表が多数あり、東大生の応用力の高さを感じました。最終的に10名の受賞者を決定しましたが、いずれも第1回東京大学学生発明コンテストにふさわしいものといえます。

今後、この発明コンテストのステイタスは受賞者がどのような活躍を行うかにかかっていると思います。受賞者が知的財産を率先して想像し、社会で活躍することを願っています。

概況

生産技術研究所では、3月27日(土)、「第1回東京大学学生発明コンテスト」の表彰式が行われた。このコンテストは、学生が発明や知的財産権に対する理解を深めることを目的に、生産技術研究所・産学連携委員会(委員長:畑中研一教授)と財団法人生産技術研究奨励会(TLO)の共催で企画されたもので、東京大学の学生を対象に昨年11月4日から12月1日まで応募を受け付けた。新規の企画であったため応募件数の多寡が予想できなかったが、最終的には全学から20件もの応募があった。応募案件は、1. 日常生活品、2. 研究から生まれた発明、3. 研究には無関係ではあるが技術的に高度な発明、の3つの分野に分け、先行技術の調査結果や新規性を考慮して書類審査を行い、10件を本審査の対象とした。

本審査は3月13日(土)に行われ、発明者の学生によるプレゼンテーションに対する質疑応答の後、発明の新規性・新鮮さ・着想や工業所有権としての価値、技術レベル、発明としての完成度などを基準に選考が行われた。本コンテストは、教育の一環であることに鑑み、発明の経済的な価値は重視せず、書類審査の過程で明らかとなった先行技術を回避するための工夫、さらには発明の経緯やアピール方法なども評価の対象とした。本審査は、大学の教官だけでなく、弁護士、弁理士、TLO職員をはじめとする知的財産を取り扱う専門家の協力のもと、最優秀賞(1件)、優秀賞(2件)、アイデア賞(3件)、奨励賞(4件)についての選考が行われた。

表彰式は、3月27日(土) 13:00から生産技術研究所第一会議室において行われ、小宮山宏副学長による挨拶の後、西尾茂文所長より受賞者に対して各賞に対する表彰状、楯、副賞が贈呈された。最優秀賞は、放射線検出装置を発明した大学院工学系研究科システム量子工学専攻・博士2年の澁谷憲悟君に授与された。下記の受賞者一覧に示すように、大学の研究に関係するものだけでなく、日常生活から生まれた「学生らしい発明」も数多く表彰された。表彰後、畑中研一審査委員長により発明に対する講評が述べられ、つづいて受賞者を代表して澁谷憲悟君が挨拶をし、記念撮影の後、記者会見および懇親会が行われた。

学部学生にはあまりなじみの無い「発明」というものを対象にしているため、今回は理科系の大学院生による応募が多かった。本コンテストは、柔軟な思考を持つ学生が、自らの発明を文書化してアピールし、かつ権利主張を行うトレーニングの機会を与える「教育プログラム」として企画されており、実施例がなくても実現可能なアイデアのみでも応募できるため、今後は文科系理科系を問わず学部学生からの積極的な応募を期待している。また、応募された発明の中から特に優秀な発明に対しては、財団法人生産技術研究奨励会(TLO)が特許出願のサポートも行う予定である。

今回の発明コンテストは、「発明」や「特許」という取り扱いに配慮が必要なものを対象にしているため、コンテストの運営は困難が多かったが、企画の段階から、産学連携委員の教官と事務方、さらには生産技術研究奨励会の室員が一致団結した体制で準備・運営を行った。また、発明に対する評価や先行事例の調査などは、特許を扱う専門家の多大な支援を受けながら遂行された。初めての企画としては優れた発明が数多く集まり、当初の予想をはるかに越え成功裏に終わったが、将来的には「発明コンテスト」が全学的な行事に発展することを期待している。

表彰式

第1回 東京大学学生発明コンテストの授賞式が2004年3月27日(土)に行われました。西尾茂文東京大学生産技術研究所長、小宮山宏東京大学副学長も参加されました。

日時 2004年3月27日(土) 13:00-14:00
場所 東京大学生産技術研究所 第1会議室 (Dw-601)
式次第
  • 所長挨拶・・・西尾 茂文 (東京大学生産技術研究所長)
  • 副学長挨拶・・・小宮山 宏 (東京大学副学長)
  • 表彰
  • 審査委員長講評・・・畑中 研一 (東京大学教授)
  • 受賞者代表挨拶・・・澁谷 憲悟 (最優秀賞受賞者)
  • 記念撮影・記者会見

最優秀賞・優秀賞・アイデア賞・奨励賞受賞者には金一封と、表彰状、楯が贈呈されました。

受賞者の声

最優秀賞
澁谷 憲悟 (工学系研究科 システム量子工学専攻 博士2年)
「放射線検出装置」

(第1回東京大学学生発明コンテストの表彰式に当たり、)受賞者を代表して一言ご挨拶申し上げます。私は、ポスターを見かけて今回発明を応募いたしましたが、本日の表彰式に、このように大勢の方が御出席下さっていることを目の当たりにして、改めて学内外からのコンテストに対する関心の高さを実感いたしております。

先週とある週刊誌を読んでおりますと、東大卒の社員に対する評価として「まじめに努力をするが、創造性には欠ける」との記事がありました。その点、それぞれの発明を携えて集まった本日の受賞者の中には、柔軟な発想力を兼ね備えた方も多いのではないでしょうか。

私の場合、発明とは『脱線』であったような気がします。もともとの研究は、ナノ材料からの発光スペクトルを調べる実験でした。ピークの波長から発光の起源を議論する基礎的な研究です。しかしその時、私が気になったのは、ピークの位置ではなくてピークの大きさでした。「冷やしてもいないのに、これはよく光るなぁ」という素朴な感想が、発光タイプの放射線センサーの第一歩になったのです。もちろんここまで至るまでには、企業での研究経験を有する当時の指導教官の御助力があり、またスポンサーである科学技術振興機構の方も熱心に特許の出願を勧めて下さいました。

4月からは国立大学の法人化に伴って、研究室から東京大学の経営に資するような知的財産が生み出されてくるものと期待されています。そして、そのような知的財産の創出を促すために、学生への啓蒙は欠かせません。なぜならば、実験を五感で体験しながら遂行し、実験で得られた生のデータを管理しているのは大学院生である場合も多いからです。しかし、学生が自分の研究を違った角度から眺めて、「ひょっとしたら何か人の役に立つのではないか」と自問自答する習慣は、まだ乏しいかもしれません。その意味でも、本コンクールの益々の御発展をお祈りするものです。

また、更に全学的な取り込みとして、(今日は副学長先生もお見えになられておりますが、) 一、特許の出願を実習の単位として認定する、 二、優秀な発明を行った学生の授業料を減免する、 等の特典を用意されると、更に効果的なのではないでしょうか―――などと、最後に少々勝手な要望を申し上げまして、受賞のご挨拶に代えさせていただく次第です。ありがとうございました。

優秀賞
岡部 友彦 (工学系研究科 建築学専攻 修士2年)
「スライドファスナー」
優秀賞
才田 大輔 (工学系研究科 電子工学専攻 博士1年)
「基板掃除機」

研究活動の中,実験の前処理作業に対して何か楽をする方法はないだろうかと考え今回の発明に至りました。「本当に特許になるだろうか」と半信半疑で応募しましたが,書類審査で先行特許の存在を知り,また本審査でのディスカッションを通じて「どのように改善すれば特許になり得るか」を学ぶ事ができました。発明を特許に結びつけるためのアプローチの仕方を体験することができ,有意義な経験が得られたことを感謝します。

アイデア賞
大久保 康平 (工学系研究科 システム量子工学専攻 修士1年)
「リール式ナップザック」

自分のアイデアが認められることには格別の喜びを感じます。小さい頃からそうでした。昨年から即興劇のワークショップに通っているのですが、発想力も訓練次第で伸びるというのを実感しました。全く関係ない分野の経験が研究成果に貢献する、というのは良く聞く話です。何をするにしてもそこから学び取ろうとする姿勢と、自分の持つあらゆる資源を活用しようとする努力を、今後も忘れないようにしていきたいです。

アイデア賞
竹田 修 (工学系研究科 マテリアル工学専攻 博士1年)
「香料含浸合金(商標名:スウィートメタル)」

第1回東京大学学生発明コンテストにおきまして、アイデア賞にお選びいただき大変光栄に存じ上げます。日本人は独創性が乏しいと国内外から批判されて久しくありますが、先達の発見・発明を省みますと決してそんなことはないように思われます。しかしながら、自らの発見・発明を外部に積極的にアピールする機会や技術が不足しているのも確かだと思います。このコンテストを通してそんな所感を抱きましたが、これから本コンテストに挑戦される方々へ果敢なる創造を期待し、自らも常に新しく斬新な発想をすべく邁進してゆきたいと思います。このたびは本当にありがとうございました。

アイデア賞
細居 洋介 (工学部 マテリアル工学科 3年)
「HANABI ~星降る夜をあなたに~」

今回私が発明コンテストに参加して最もためになったことは、もちろんアイデア賞を頂いたことは非常にうれしかったが、何より‘特許’に関しての自分の中での敷居が下がった事です。今後もできるだけ学部生などの時間がある間に、今後の社会で重要視されるであろう知的財産に対する興味を駆り立てて欲しいと思います.また講義中での告知や実際に特許を申請した前例ができればより、興味も湧くでしょうからコンテストの発展に期待したいと思います。

奨励賞
赤松 直樹 (工学系研究科 精密機械工学専攻 修士2年)
「剣山型フレキシブル神経電極」
奨励賞
新田 英之 (工学系研究科 電気工学専攻 修士2年)
「生体分子モーターを用いたナノスケ-ル微小空間における温度検出」

今回発明コンテストに参加して最も強く実感したことの一つに、特許と論文の違いがありました。工学の学術分野における発明とは、研究の意義のもとに何かを設計し、それを実現して考察を加え、初めて発表できる結果となる。それが特許においては設計までの段階で申請でき、それを実現する必要は必ずしもないということである。これは自分にとってはきつい実験をしなくてもいい「好きなアイディア言いたい放題」に思われた。是非みなさんもその「言いたい放題」を楽しんでいただくため、当発明コンテストに応募してみてはいかがでしょうか。

奨励賞
稲垣 秀彦 (教養学部 理科II類 1年)
「ニューラルネットワークを利用した機能的siRNA配列の予測プログラム」

少し興味があった論文を見て作ってみたプログラムを応募して、入選して驚きました。特許にはならないとのことでしたが、特許申請の様子や審査の様子を垣間見ることができ勉強になりました。未熟な一年生にこのような機会を与えてくださった、奨励会の方々ありがとうございました。

奨励賞
白浜 公平 (理学系研究科 天文学専攻 修士1年)
「回転円盤を用いた周期蛍光現象の時間分光法」

「びっくりしたね、賞取っちゃったよ。」 「本当だね。びっくりした。」 「出張と重なっちゃってプレゼンテーションと授賞式に参加できなかったのが残念だったけど。」 「そんな研究ほっといて参加すればよかったのに。君が研究なんかしなくったって星は勝手に生まれたり消えたりするから大丈夫だよ。」 「それはそうだけど。」 「今度新しい発明をしてまた参加すればいいじゃない。」 「そうだね。今度はもっとお金になりそうなやつを・・・。」 「えげつないね。」 「だって考えてもみろよ。ちょっとした日用品を発明したとして、それが世界中に売れれば、たとえ1個1円の利益でも、10億個も売れれば・・・。うひひ。」 「やっぱり研究に励んだほうがいいよ、君は。」 「でも、応募用紙を用意したり、プレゼンテーションの内容を考えたりしていたときには、なんだかわくわくしたね。」 「そうだね。楽しかったね。」 「是非またわくわくしたいね。」 「とにかくお礼を言っておかないと。」 「ありがとうございました。」 「本当にありがとうございました。」 。

東京大学学生発明コンテスト
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